猫のうんちに血!元気でも大丈夫?緊急度チェックと対処法
愛猫のトイレに血が混じっているのを見つけ、今、心臓がドキッとしたことでしょう。とても心配ですよね。
猫の血便は、たとえ本猫が元気そうに見えても、必ず何らかの原因が隠れています。自己判断で「大丈夫だろう」と様子を見るのは、時として危険な場合もあります。
この記事は、単に病名を羅列してあなたの不安を煽るものではありません。動揺しているあなたが、今すぐご自宅でできる「冷静な観察ポイント」と「病院に行く前の万全な準備」を、専門家の視点から具体的にお伝えする、緊急時の行動マニュアルです。
この記事を最後まで読めば、動物病院へ行くべきかどうかの的確な判断基準がわかり、獣医師に愛猫の状況を正確に伝える準備ができます。
まずは落ち着いて。猫が「元気そう」に見えても安心できない理由
「うんちに少し血が付いただけだし、本人は元気で食欲もあるから、少し様子を見てもいいですか?」
これは、動物病院の診察室で飼い主さんから最もよく受ける質問の一つです。愛猫を想うからこそ、「大事であってほしくない」と願うそのお気持ち、痛いほどわかります。
しかし、ここで一つ、知っておいていただきたい重要なことがあります。それは、猫が本能的に不調を隠すのが非常に上手な動物であるという事実です。
彼らの祖先は、自然界で弱みを見せることが直接、命の危険に繋がる環境で生きてきました。その名残で、猫は体調が悪くても、飼い主の前では気丈に振る舞おうとすることが少なくありません。
ですから、「元気そうに見える」という飼い主さんの感覚だけを頼りにするのは、残念ながら危険な場合があるのです。猫の血便という症状は、言葉を話せない愛猫が私たちに見せてくれる、数少ない体からの重要なサインです。あなたの冷静な観察が、愛猫を救う何よりの手がかりになります。
【専門家からのアドバイス】
結論:「元気そう」という主観と、「血便が出ている」という客観的な事実、両方をもって動物病院に相談してください。
なぜなら、多くの飼い主さんが「元気だから」という理由で受診をためらい、結果的に病気の発見が遅れてしまうケースを何度も見てきたからです。特に大きな病気ほど、初期段階では元気に見えることが多いのです。迷ったらまず専門家に相談する、この習慣があなたの愛猫を守ります。
【緊急度チェックリスト】1つでも当てはまればすぐ病院へ!危険なサインの見分け方
それでは、具体的にどう行動すればよいか、緊急性を判断するためのチェックリストをご用意しました。上から順番に確認してみてください。
🚨 ステップ1:血便以外の「緊急症状」チェック
まず、血便という症状に加えて、以下のうち一つでも当てはまる症状があれば、それは緊急性が高いサインです。夜間であっても、すぐに救急対応可能な動物病院へ連絡してください。
- 何度も嘔吐を繰り返す
- ぐったりして動かない、元気がない
- 食欲が全くない
- 水様性の下痢が続いている
- お腹を触ると痛がる、怒る
🩸 ステップ2:血便の色と状態による「緊急度分類」
上記の緊急症状が見られない場合、次に血便そのものの状態を観察します。猫の血便は、出血している場所によって大きく2種類に分類され、この血便の分類が緊急度を判断する重要なヒントになります。
1. 真っ赤な鮮血便 (Hematochezia)
- 特徴: 便の表面に、絵の具のような真っ赤な血が付着している、またはポタポタと血が垂れる。
- 考えられること: 肛門や直腸、大腸といった、出口に近い部分からの出血を示唆します。硬い便で切れた、大腸炎などが原因として考えられます。
2. 黒いタール状の便 (Melena)
- 特徴: 全体が黒っぽく、ドロリとしたタールのような便。
- 考えられること: こちらはより注意が必要です。胃や小腸といった、上部の消化管で出血が起こり、血液が消化液によって黒く変色した状態を示します。異物の誤飲や腫瘍など、深刻な病気の可能性も考えられます。
黒いタール状の便が出た場合は、たとえ猫が元気そうに見えても、できるだけ早く動物病院を受診することを強く推奨します。
獣医師に的確に伝える「3つの準備」。病院に行く前にすべきこと
動物病院での診断において、問診、つまり飼い主さんからのお話は、レントゲンや血液検査と同じくらい重要な情報です。
あなたの愛猫に何が起きているのか、その全体像を把握するために、私たち獣医師は様々な質問をします。その際、情報が正確で具体的であるほど、診断の精度は格段に上がります。
病院に行く前に、以下の3つの準備をしておくと、診察が非常にスムーズに進みます。
【準備1】スマホで写真を撮る
百聞は一見に如かず、です。血便の現物を見せていただくのが最も確実ですが、まずは証拠保全のために、見つけたらすぐにスマートフォンで写真を撮っておきましょう。
- 撮影のポイント:
- 明るい場所で撮る
- 便全体の状態(硬さや形)がわかる写真
- 血の色や量がはっきりわかるように、接写した写真
【準備2】状況をメモする
パニックになっていると、いざ獣医師を前にした時に「あれ、いつからだっけ?」と忘れてしまいがちです。以下の項目を、スマートフォンのメモ機能や手帳に書き出しておきましょう。
✅ 獣医師に伝えることメモ(コピーして使えます)
- いつから?: (例:昨日の夜、初めて気づいた)
- 頻度は?: (例:トイレのたびに出る、今日だけで3回目)
- 便の硬さは?: (例:いつも通りの硬い便、ドロドロの下痢)
- 血の色と量は?: (例:鮮やかな赤色で、表面に少し付いている程度)
- 他の症状は?: (例:食欲はいつも通り、吐いてはいない)
- 最近の変化は?: (例:3日前にフードを新しいものに変えた)
- おしっこは正常?: (例:いつも通り出ている)
【準備3】便を採取する(可能なら)
もし可能であれば、採取した便を持参していただくと、その場で糞便検査ができ、迅速な診断に繋がります。
- 採取のポイント:
- ラップやビニール袋、タッパーなどに入れて、乾燥しないようにする。
- 採取した日付と時間をメモしておく。
- 量は、親指の第一関節くらいの大きさがあれば十分です。
これらの準備は、動物病院での問診という診断プロセスを円滑にし、結果的にあなたの愛猫のための最善の治療へと繋がります。
猫の血便に関するよくある質問(FAQ)
最後に、飼い主さんからよくいただく補足的な質問にお答えします。
Q. ストレスが原因でも病院に行くべき?
A. はい、行くべきです。血便の原因がストレスであるという診断は、他の深刻な病気の可能性をすべて除外した後に、獣医師が下すものです。飼い主さんが「きっとストレスだろう」と自己判断するのは危険です。
Q. 病院ではどんな検査をするの?費用は?
A. まずは問診と視診、触診を行います。その後、持参いただいた便で糞便検査(寄生虫の有無などを確認)をすることが多いです。費用は病院によって異なりますが、初診料と糞便検査で数千円程度が一般的です。必要に応じて、血液検査やレントゲン検査、超音波検査などを追加提案する場合もあります。
Q. フードはすぐに変えたほうがいい?
A. 自己判断でフードを変えるのは待ってください。もしフードが原因でない場合、頻繁な変更はかえって胃腸に負担をかけてしまいます。まずは獣医師の診断を受け、その指示に従ってください。
まとめ:あなたの冷静な行動が愛猫を救います
愛猫の血便を見つけたら、誰でも動揺してしまいます。しかし、そんな時こそ、この記事でお伝えしたことを思い出してください。
- まずは落ち着いて、血便以外の危険なサインがないかチェックする。
- 証拠(写真・メモ)を準備して、動物病院に連絡する。
あなたのその冷静な観察と行動が、言葉を話せない愛猫を救う何よりの力になります。あなたは一人ではありません。少しでも不安や迷いがあれば、ためらわずに動物病院へ電話で相談してください。それが、あなたと大切な家族である愛猫にとって、最も安全で確実な選択です。
[参考文献リスト]
- アニコム損害保険株式会社. 「家庭どうぶつ白書」
- 公益社団法人 日本獣医師会
- 一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム

