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猫のタマタマが片方ない?「正常・異常」の30秒チェックと停留睾丸のリスク解説

猫のタマタマが片方ない?「正常・異常」の30秒チェックと停留睾丸のリスク解説

猫のタマタマが片方ない?「正常・異常」の30秒チェックと停留睾丸のリスク解説

「あれ? うちの子、タマタマが片方しかないかも…」

愛猫とスキンシップをとっている最中、ふとそんな違和感を覚えたことはありませんか? 初めてオスの子猫を迎えた飼い主さんにとって、何が正常で何が異常なのかを判断するのはとても難しいことです。

「まだ小さいから見えないだけ?」「もしかして病気?」と不安になるその気持ち、痛いほどよく分かります。

もし、生後2ヶ月を過ぎても精巣(睾丸)が2つ確認できない場合、それは「停留睾丸(ていりゅうこうがん)」という状態かもしれません。

この記事では、写真や図解の代わりに、わかりやすい言葉で解説する「3ステップ・セルフチェック」をご紹介します。この記事を読み終える頃には、愛猫の状態が「正常」なのか、それとも「病院で相談すべき状態」なのかがはっきりと分かり、安心して次の行動を選べるようになっているはずです。

まずは深呼吸して、一緒に愛猫のお尻をチェックしてみましょう。


目次

「片方ない気がする…」それって病気?猫のタマタマの正常な成長過程

「いつになったらタマタマは降りてくるんですか?」

子猫の診察で、飼い主さんから最もよくいただく質問の一つです。実は、猫の精巣(睾丸)は生まれた瞬間から股間にあるわけではありません。

猫の精巣は、最初は赤ちゃん猫のお腹の中(腎臓の近く)にあります。そこから成長とともに少しずつ体の下へと移動し、最終的に股間の袋である「陰嚢(いんのう)」へと収まるのです。この「精巣が降りてくる旅」には、明確なタイムリミットがあります。

生後2ヶ月が「正常な発達」の判断基準です

猫の精巣が移動するスケジュールは、以下の通りです。

  • 生後0日〜: まだお腹の深いところにあります。外からは全く分かりません。
  • 生後1ヶ月頃: お腹から股の付け根(鼠径部)あたりへ移動してきます。
  • 生後2ヶ月頃: 陰嚢の中に2つとも完全に降りてきます。

つまり、生後2ヶ月という時期は、猫の精巣が正常に発達しているかを見極めるための重要な基準となります。この時期を過ぎても陰嚢の中に精巣が2つ揃っていない場合、精巣が旅の途中で迷子になってしまった「停留睾丸(潜在精巣)」の疑いが極めて濃厚になります。

【アドバイス】

「そのうち降りてくるかも」と期待して待つのは、生後6ヶ月が限界です。

なぜなら、生後6ヶ月を過ぎると精巣が通る道(鼠径管)が閉じてしまうため、自然に降りてくる可能性はほぼゼロになるからです。「まだ小さいから」と放置してしまい、成猫になってから開腹手術が必要になるケースも少なくありません。生後2ヶ月を過ぎて確認できなければ、次回のワクチン接種時に必ず獣医師に相談してください。


うちの子はどっち?30秒でできる「停留睾丸」セルフチェック

では、実際に愛猫の状態を確認してみましょう。特別な道具は必要ありません。猫ちゃんがリラックスしている時に、優しく声をかけながら行ってくださいね。

ここで行うセルフチェックの対象は、精巣が入っている袋である「陰嚢(いんのう)」です。この中に「豆粒のような中身」が2つあるかどうかがポイントです。

3ステップ確認ガイド

  1. しっぽを持ち上げる
    猫を立たせた状態、または抱っこした状態で、しっぽの付け根を優しく持ち上げ、肛門の下にある陰嚢が見えるようにします。
  2. 目で見る(視診)
    肛門の下に、小さな膨らみが2つ並んでいるか確認します。

    • 正常: 左右対称に2つの膨らみ(ふぐり)が見えます。
    • 異常: 片方だけ膨らんでいる、または全体的にぺたんこで膨らみが見当たりません。
  3. 優しく触る(触診)
    親指と人差し指で、陰嚢を優しくつまんでみます。

    • 正常: コリコリとした豆粒のような感触が2つあります。
    • 異常: 1つしか触れない、あるいは中身が空っぽで皮だけの感触がします。

もし「片方しかない」「全くない」という結果でも、焦る必要はありません。これは緊急事態ではありませんが、将来の健康のために獣医師の診断が必要なサインです。


「もし停留睾丸だったら?」放置のリスクと去勢手術の必要性

「片方だけでも元気なら、そのままでいいんじゃないですか?」

「手術でお腹を切るのはかわいそうで…」

そう思う飼い主さんの気持ち、とてもよく分かります。しかし、獣医師の知見としてこれだけは伝えさせてください。停留睾丸(潜在精巣)と診断された場合、唯一にして最大の解決策は「去勢手術」です。

なぜ、お腹の中に残してはいけないのか?

停留睾丸が精巣腫瘍(ガン)の直接的な原因となるからです。

精巣は本来、体温よりも低い温度環境を好みます。そのため、体の外にある袋(陰嚢)の中にぶら下がって冷やされているのです。しかし、停留睾丸の状態では、精巣がお腹の中や股の皮膚の下といった「高温の環境」に留まり続けることになります。

この温度差が精巣の細胞を変性させ、腫瘍化のリスクを正常な精巣の10倍以上に劇的に高めてしまうのです。

【アドバイス】

停留睾丸の手術は、病気になってから受ける「治療」ではなく、病気を未然に防ぐための「予防」です。

なぜなら、精巣腫瘍になってからの手術は、転移のリスクや高齢による麻酔リスクが伴うからです。若くて体力のあるうちに、去勢手術という解決策を選んであげることが、愛猫への一番のプレゼントになります。


費用は?入院は?「停留睾丸の去勢手術」よくある質問Q&A

最後に、停留睾丸の手術に関して、飼い主さんからよくご相談いただく不安にお答えします。

Q1. 普通の去勢手術と何が違うのですか?

A. 精巣がある場所によって、手術方法が変わります。

通常の去勢手術は陰嚢の皮膚を少し切るだけで済みますが、停留睾丸がお腹の中にある場合は、メス猫の避妊手術のように開腹手術が必要になります。そのため、通常の去勢手術よりも手術時間が少し長くなり、費用も高くなる傾向があります。正確な費用については、かかりつけの動物病院に確認が必要です。

Q2. 入院は必要ですか?

A. 病院の方針によりますが、日帰り〜1泊入院が一般的です。

お腹を切る開腹手術の場合は、術後の痛みの管理や安静のために1泊入院をおすすめすることが多いです。皮膚の下(股の付け根)にある場合は、日帰りで済むこともあります。かかりつけの先生に確認してみましょう。

Q3. 片方だけでも子供は作れますか?

A. 理論上は可能ですが、繁殖はおすすめしません。

降りてきている片方の精巣には生殖能力があることが多いです。しかし、停留睾丸は遺伝する可能性が高い体質です。生まれてくる子猫も同じ苦労をする可能性が高いため、繁殖はさせず、去勢手術を行うことが推奨されます。


まとめ:早期発見が愛猫を守る。まずは次回の健診で相談を

ここまでのポイントを整理しましょう。

  1. 猫の精巣は生後2ヶ月までに降りてくるのが正常な発達です。
  2. セルフチェックで「2つの膨らみ」が確認できなければ、停留睾丸の疑いがあります。
  3. 停留睾丸を放置すると、将来的に精巣腫瘍になるリスクが10倍以上になります。
  4. 解決策は去勢手術で摘出することです。

「片方ないかも」と気づけたあなたは、とても観察力のある素晴らしい飼い主さんです。その気づきが、愛猫を将来の病気から守るきっかけになります。

今すぐ緊急で病院に走る必要はありません。次回のワクチン接種や健康診断のついでに、「タマタマが片方ない気がするんです」と獣医さんに伝えてみてください。

プロの目で確認し、その子に最適な手術のタイミングを一緒に計画してくれるはずです。あなたの愛猫ちゃんが、これからも健康で長生きできますように。

参考文献・情報源

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