【猫の恩返し】ムタの正体は伝説の犯罪者?本名や「耳をすませば」との意外な関係を徹底考察
「あの太った猫、口は悪いけどなんか憎めない…」
『猫の恩返し』を見て、そう思ったことはありませんか?
主人公のハルを助ける猫の事務所のメンバー、ムタ。一見すると、ただの食いしん坊で粗暴な「デブ猫」に見えるかもしれません。しかし、実はムタには、猫の国の歴史に残る「凶悪な大犯罪者」という裏の顔があるのです。
なぜ、そんな危険な猫がハルを助けるのか? そして、なぜ私たちは、完璧な紳士であるバロン以上に、この不器用なムタに惹かれてしまうのか?
本記事では、公式設定や『耳をすませば』との意外な繋がりを紐解きながら、大人になった今だからこそ響く「ムタ(ルナルド・ムーン)」の真の魅力を深掘りします。
読み終える頃には、きっとあなたも、ムタの大きな背中にもう一度会いたくなっているはずです。
なぜ私たちは「ムタ」に惹かれるのか?愛すべきデブ猫の基本情報
『猫の恩返し』を見返すと、バロンに恋する人は多いですよね。でも、ちょっと待ってください。大人になった今こそ注目すべきは、あのふてぶてしいデブ猫、ムタさんなんです。
ムタの第一印象は、決して良くありません。「十字街」にどっかと座り込み、口を開けば憎まれ口。常に何かを食べていて、愛想のかけらもありません。スマートで紳士的なバロンとは対照的な存在です。
しかし、物語が進むにつれて、ムタの印象はガラリと変わります。
いざ戦闘になれば、その巨体を活かして敵をなぎ倒し、ハルを守る盾となる。普段は「めんどくせえ」と言いながらも、仲間がピンチの時には誰よりも体を張る。この「普段のダメな姿」と「ここぞという時の頼もしさ」のギャップこそが、ムタの最大の魅力です。
完璧超人であるバロンにはない、人間臭さ(猫臭さ?)と親近感。それが、私たちがムタを愛してやまない理由なのです。
ムタの魅力は「ギャップ」にある
ムタが持つ魅力は、その極端なギャップにあります。彼の姿を対比させてみると、その親近感と頼もしさが際立ちます。
【普段の姿(親近感)】
- 食い意地が張っている(マタタビゼリーの壺にハマる)
- 口が悪く、常にめんどくさがり屋
【戦闘時の姿(頼もしさ)】
- 圧倒的なパワーで敵をなぎ倒す
- 仲間を守る「盾」となり、情に厚い
このギャップこそが、彼を愛すべきキャラクターにしているのです。
その正体は凶悪犯!?伝説の「ルナルド・ムーン」と壁画の謎
ここからは、少しディープな話に入りましょう。ムタの正体についてです。
作中で、猫の国の城に潜入した際、ムタは兵士たちに囲まれ、ある名前で呼ばれます。
「ルナルド・ムーン」
これこそが、ムタの本名であり、猫の国を震撼させた伝説の大犯罪者の名前です。
壁画に残る伝説の悪行
公式設定や劇中の描写によると、ルナルド・ムーン(ムタ)はかつて、「猫の国の湖の魚を一人で食い尽くして逃げた」という途方もない事件を起こしています。
この事件は猫の国では歴史的な大惨事として扱われており、城の壁画にも、巨大な猫(ムタ)が魚を貪り食う姿が描かれているほどです。つまり、ムタは単なる食いしん坊ではなく、一国の生態系を脅かすほどの規格外の欲望と力を持った存在なのです。
なぜ「ムタ」と名乗っているのか?
では、なぜルナルド・ムーンは、人間界で「ムタ」という名前で過ごしているのでしょうか?
ムタという名前は仮の姿であり、本名のルナルド・ムーンこそが彼の正体です。 しかし、彼が名前を隠しているのは、過去を恥じているからでも、追っ手を恐れているからでもなさそうです。
彼にとって、過去の栄光(悪名?)も、猫の国の法律も、どうでもいいことなのでしょう。「ムタ」という短く呼びやすい名前で、商店街の野良猫として気ままに生きる。この「過去や肩書きに縛られない究極の自由さ」こそが、ルナルド・ムーンというキャラクターの本質を表しています。
【鑑賞アドバイス】
映画を見返す際は、城の壁画シーンで一時停止して、ムタの伝説を確認してみてください。
なぜなら、この点は多くの人が一瞬のシーンとして見落としがちですが、壁画に描かれるほどの影響力をムタが持っていたという事実を知ることで、彼がなぜ猫王にすら物怖じしないのか、その態度の説得力が段違いに変わってくるからです。この知見が、あなたの作品鑑賞をより深いものにするでしょう。
月島雫が託した「自由」の象徴―『耳をすませば』との深い繋がり
『猫の恩返し』を語る上で欠かせないのが、映画『耳をすませば』との関係です。
実は、『猫の恩返し』という作品自体が、『耳をすませば』の主人公・月島雫が大人になってから書いた物語であるという設定を持っています。
創造主・月島雫とモデル・ムーンの関係
この構造を理解すると、ムタというキャラクターに込められた意味がより深く見えてきます。
ムタのモデルとなったのは、『耳をすませば』で雫を地球屋へと導いた、あの太った野良猫「ムーン」です。
現実のムーンは、電車に勝手に乗り込み、犬に吠えられても動じず、複数の家を渡り歩いて食事をもらう、ふてぶてしい猫でした。中学生だった雫は、そんなムーンの姿に「自分の物語を生きる自由さ」を感じていました。
雫がムタに託した「憧れ」
雫は、自身の小説の中で、現実の野良猫ムーンをモデルに「ルナルド・ムーン」というキャラクターを創造しました。そして、現実の「あちこちで餌をもらう」という行動を、物語の中では「国中の魚を食い尽くす大犯罪」という伝説にまでスケールアップさせました。
ここには、優等生として生きることに息苦しさを感じていた雫の、「枠にはまらない自由への強烈な憧れ」が投影されています。
つまり、ムタ(ルナルド・ムーン)とは、創造主である月島雫が理想とする「誰にも、何にも縛られない自由な魂」の象徴なのです。
現実の「ムーン」と物語の「ムタ」の対比
| 項目 | 『耳をすませば』のムーン (モデル) | 『猫の恩返し』のムタ (キャラクター) |
|---|---|---|
| 性格 | ふてぶてしい、マイペース | 口が悪い、豪快、情に厚い |
| 行動 | 電車で移動、複数の飼い主を持つ | 十字街で生活、異世界を行き来する |
| 伝説 | 「ムーン」「お玉」など様々な名を持つ | 国中の魚を食い尽くした大犯罪者 |
| 雫の視点 | 自由気ままな野良猫への興味 | 規格外の自由への憧れの投影 |
「ハッキリした女が好き」に隠されたムタ流の美学と優しさ
私がムタを「大人のメンター」として推す最大の理由。それは、物語のクライマックスで彼が放つ、あるセリフにあります。
「俺はハッキリした女が好きなんだ!」
このセリフ、単なる好みの話ではありません。ここには、バロンとは異なる、ムタ流の「不器用な優しさ」が凝縮されています。
バロンとムタの「守り方」の違い
紳士的なバロンと粗暴なムタは、ハルへの接し方において明確な対比関係にあります。
バロンは常にハルを気遣い、紳士的にエスコートします。一方、ムタはハルが猫の国で迷い、流されている間は、助言こそすれ、手取り足取り助けようとはしません。むしろ「猫になっちまえばいい」と突き放すようなことさえ言います。
しかし、ハルが自分の意思で「私は帰りたい!」と叫び、迷いを断ち切った瞬間、ムタは「俺はハッキリした女が好きなんだ!」と叫び、全力で敵をなぎ倒し始めます。
自立を待つ優しさ
ムタは、ハルが「自分で決める」のを待っていたのです。
甘やかすだけが優しさではない。相手が覚悟を決めるまでは手を出さず、決めた瞬間に全力を貸す。これは、相手を一人の人間として尊重し、信じていなければできないことです。
「ハッキリした女が好き」という言葉は、ハルの自立と成長を認めた、ムタなりの最高の賛辞だったのです。
よくある疑問(FAQ):声優・モデル・最後のセリフ
最後に、ムタについてよく検索される疑問に、専門家の視点でお答えします。
Q. ムタの声優さんは誰ですか?
A. 俳優の渡辺哲(わたなべ てつ)さんです。
渡辺哲さんは、『もののけ姫』で山犬の声を担当したことでも知られています。宮崎駿監督は、ムタのキャラクターに「荒ぶる自然のような力強さ」を求めていたのかもしれません。あのドスの利いた低い声が、伝説の犯罪者としての説得力を生んでいます。
Q. ムタの名前のモデルはいますか?
A. プロレスラーの「グレート・ムタ」と言われています。
宮崎駿監督の発案です。グレート・ムタは、悪役(ヒール)でありながら絶大な人気を誇る伝説のレスラー。暴れん坊だけど愛されるムタのキャラクター像にぴったり重なります。
Q. 最後のセリフ「俺”も”変わる」の意味は?
A. ムタ自身の心境の変化を示唆しています。
エンディングで、ハルに対して「俺も変わるかな…」といった趣旨のセリフを呟きます(※正確なセリフは視聴環境によりますが、変化を示唆する言葉です)。
これは、ハルの成長を目の当たりにしたことで、「過去の伝説」や「今の気ままな生活」に安住していたムタ自身も、新しい一歩を踏み出そうと感じたことを表しています。ハルだけでなく、ムタもまた、この冒険を通じて何かを得たのです。
まとめ:今こそ、ムタの「背中」を見に行こう
ムタ(ルナルド・ムーン)は、単なるコミカルなデブ猫ではありません。
- 猫の国の体制すら恐れない、規格外の自由の象徴。
- 月島雫が憧れを込めて描いた、理想のアウトロー。
- そして、ハルの自立を静かに見守り、背中を押した不器用なメンター。
大人になった今だからこそ、彼の言葉の重みや、行動の端々に隠された優しさが、より深く心に響くはずです。
今度の金曜ロードショー、またはDVDで『猫の恩返し』を見る際は、ぜひバロンだけでなく、ムタの「背中」に注目してみてください。きっと、以前よりもっと、この物語が好きになるはずです。
