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猫の描き方|「猫耳人間」はもう卒業!プロが教えるマズルと骨格の3つのロジック

猫の描き方|「猫耳人間」はもう卒業!プロが教えるマズルと骨格の3つのロジック

猫の描き方|「猫耳人間」はもう卒業!プロが教えるマズルと骨格の3つのロジック

「猫を描いたはずなのに、なぜか『猫耳をつけたおじさん』みたいになってしまう…」

「マズル(口元)を描けば描くほど、平面的な顔になって可愛くない…」

クロッキー帳を前に、そんなため息をついていませんか? その気持ち、痛いほど分かります。実はそれ、あなたの画力が足りないせいではありません。普段、人物イラストを描き慣れているからこそ陥る「脳のバイアス(思い込み)」が原因なのです。

ここでは、「感覚」ではなく「構造ロジック」で猫を描くための3つの矯正メソッドを伝授します。

「可愛く描こう」と念じるのは一旦やめましょう。マズルを「紙コップ」、耳を「頭の後ろのパーツ」として捉え直すだけで、あなたの描く猫は劇的に「本物の猫」へと進化します。


目次

なぜあなたの描く猫は「人間っぽく」なってしまうのか?

正直に告白しますと、私もかつては「猫耳人間」を量産していました。

顔の輪郭を丸く描き、その真横に耳を乗せ、真ん中に目と鼻を描く。するとどうでしょう。猫というよりは、「猫のコスプレをした人間」がこちらを見つめているような、なんとも言えない違和感のある絵が出来上がります。

この失敗の最大の原因は、私たちの脳が優秀すぎることに関係しています。

普段、人物を描いている私たちの脳は、無意識のうちに「顔のパーツ配置=人間の比率」で処理しようとします。「目は顔の真ん中」「耳は目の横」という、人間用の強力な手癖(バイアス)が、猫を描く際にも発動してしまうのです。

つまり、猫を上手に描くために必要なのは、デッサン練習よりも先に、この「人間用の手癖のメガネ」を外すことなのです。

[図:人間のバランスで描いた失敗例と、猫の骨格バランスで描いた成功例の比較図]


【ロジック1】マズルは「顔に貼り付けた紙コップ」と思え

ここからが本題です。猫を描く上で最大の難関であり、かつ「猫らしさ」を決定づける最重要パーツ。それが「マズル(ウィスカーパッド/ひげ袋)」です。

多くの人がマズルを、顔という平面の上に描かれた「ω(オメガ)型の線」や「模様」として捉えてしまっています。しかし、マズルと顔の土台は、構造的に明確に分かれた別のブロックです。

ここで、最強のイメージ法をお伝えします。

「猫の顔は、球体に紙コップを貼り付けたもの」と考えてください。

マズルの立体構造を「紙コップ」で理解する

想像してみてください。発泡スチロールの球体(頭)に、底面を少し斜めにカットした紙コップ(マズル)を貼り付けます。

  • 正面から見た時: 紙コップの底面(円)が見えます。
  • 横から見た時: 紙コップの高さの分だけ、顔からグッと前に飛び出しています。

猫が「人間」と決定的に違うのは、この「マズルの突出」です。人間は顔が平坦ですが、猫はマズルという「第3のブロック」が顔の前面に付いています。このマズルという立体構造を「紙コップ」という比喩で捉えることで、横顔や斜め顔を描く際も、「紙コップがどっちを向いているか」を意識するだけで、立体感が劇的に向上します。

[図:球体(頭)に紙コップ(マズル)を貼り付けたイメージの立体構造図]

【アドバイス】

【結論】: マズルを描くときは、最初に「台形」のアタリを取ってから、その中に口と鼻を収めてください。

なぜなら、いきなり鼻や口の「線」から描き始めてしまうと平面的になりますが、「台形(紙コップの側面)」という立体のアタリを先に描くことで、脳が強制的に「これは立体物だ」と認識し、奥行きのあるマズルが描けるようになります。


【ロジック2】耳は「横」ではなく「頭の後ろ」から生えている

「猫耳人間」になってしまうもう一つの大きな原因。それは「耳の配置ミス」です。

鏡を見てください。人間の耳は、目の高さの延長線上、つまり顔の「真横」についていますよね?

しかし、人間の耳と猫の耳は、その配置場所が決定的に異なります。

猫の耳は「集音アンテナ」

猫は狩りをする動物です。獲物の音を効率よく拾うため、耳は顔の真横ではなく、「頭頂部寄り」かつ「少し後ろ」についています。

初心者がやりがちなのが、顔の輪郭線の上にちょこんと耳を乗せてしまう描き方。これではまるで「カチューシャ」です。

本物の猫の耳は、頭蓋骨の裏側(後頭部)から滑らかに接続されています。

描くときは、耳を「三角形の板」として乗せるのではなく、「頭の後ろから生えている筒」をイメージしてください。耳の付け根が、頭の球体の裏側まで回り込んでいる線を一本足すだけで、一気に説得力が増します。

[図:人間と猫の頭を上から見た、耳の配置位置の比較図]


【ロジック3】「肩幅」を描くな!猫に鎖骨はない

顔が描けるようになったら、次は身体です。

「顔は猫なのに、身体がなんだかゴツい…」「マッチョな猫になってしまう」

そんな経験はありませんか?

その原因は、あなたが無意識に「肩幅」を描いてしまっているからです。

鎖骨がないから「液状化」できる

ここでも鎖骨というエンティティ(骨格パーツ)の有無が重要になります。

人間にはしっかりとした鎖骨があり、これが肩幅を作り、腕の動きを支えています。

一方、猫には人間のような鎖骨がありません。(退化して小さな骨片が浮遊しているだけです)。

鎖骨がないため、猫の前足は胴体と骨で繋がっておらず、筋肉だけで吊り下げられています。

その結果、猫には「肩幅」という概念が存在しません。前足は、胸の側面の筋肉から滑らかに生えているのです。

イラストを描くときは、首から肩にかけてのラインを、「究極のなで肩」として描いてください。肩の角張りを一切なくし、首から前足までを流れるような一本のラインで繋ぐ。これが、猫特有の「液状化」したような柔らかいシルエットを生み出す秘訣です。

骨格構造から見る「人間」と「猫」の描き方の違い

パーツ 人間の構造(手癖) 猫の構造(正解) 描き方のポイント
マズル 平坦な顔面 突出した第3のブロック 顔の球体に「紙コップ」を貼り付けるイメージで描く
顔の真横(9時・3時) 頭頂部・後方(11時・1時) 頭の裏側から接続させ、カチューシャにしない
鎖骨・肩 あり(肩幅がある) なし(浮遊している) 肩幅を描かず、首から前足まで滑らかに繋ぐ

よくある質問:毛並みと目の描き込み

最後に、生徒さんからよく受ける質問にお答えします。

Q. 毛並みを描くと、どうしても線が多くて汚くなってしまいます。

A. 毛並みは「全部」描いてはいけません。「輪郭」と「つむじ」だけで十分です。

毛の一本一本を描こうとすると、全体が黒ずんで重たい印象になります。プロは、輪郭線の「角」になる部分や、耳の付け根などの「毛の流れが変わるポイント(つむじ)」にだけ、ギザギザしたタッチを入れます。広い面はあえて描かず、余白を残すことで「フワフワ感」を表現できます。

Q. 目を描くと、なんだか怖い顔になってしまいます。

A. 瞳孔を細くしすぎていませんか?

猫の目は、光の量で瞳孔の大きさが変わります。明るい場所の「針のような瞳孔」を描くと、どうしても鋭く怖い印象になりがちです。可愛く描きたい場合は、瞳孔を少し丸く大きく描くのがコツです。また、ハイライト(光の反射)を黒目の上部に入れると、生き生きとした表情になります。


まとめ:まずは愛猫の顔に「紙コップ」を当てはめてみよう

猫を描くことは、決して難しいことではありません。

あなたが今まで上手く描けなかったのは、才能がなかったからではなく、「人間用の手癖」で描こうとしていただけなのです。

今日お伝えした3つのロジックを思い出してください。

  1. マズルは「紙コップ」:立体的なブロックとして捉える。
  2. 耳は「頭の後ろ」:カチューシャではなく、後頭部から生やす。
  3. 鎖骨は「ナシ」:肩幅を描かず、究極のなで肩にする。

この3つを意識するだけで、あなたのクロッキー帳に現れる猫たちは、驚くほど「猫らしく」変化するはずです。

まずは、あなたの愛猫や、お気に入りの猫の写真を一枚用意してください。そして、その写真の上に、赤ペンで「マズルの紙コップ」と「耳の付け根」のアタリを書き込んでみてください。「あ、こんなに前に出ているんだ!」「耳ってこんなに後ろなんだ!」という発見が、あなたの上達への第一歩です。

さあ、手癖のメガネを外して、本物の猫を描きに行きましょう!


参考文献

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