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猫のあごニキビ、無理に取るのは絶対NG!獣医が教える「こすらない」治し方と受診の目安

猫のあごニキビ、無理に取るのは絶対NG!獣医が教える「こすらない」治し方と受診の目安
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猫のあごニキビ、無理に取るのは絶対NG!こすらない治し方と受診の目安

あごの下に黒い砂のような粒を見つけて、驚かれましたよね。「掃除をサボったから?」「不潔にしてしまったのかも」なんて、ご自分を責める必要はありません。

それはノミの糞でも単なる汚れでもなく、「猫ニキビ(猫挫創)」と呼ばれる、猫ちゃんにはとてもよくある症状です。

「綺麗にしてあげたい」という愛情から、つい爪やブラシで取りたくなってしまうお気持ちは痛いほど分かります。しかし、実は「無理に取ろうとしない」ことこそが、猫ニキビを最短で治すための最良の治療法なのです。

この記事では、ご自宅で悪化させずに治すための「こすらないケア」のポイントと、ひと目で分かる「今すぐ病院へ行くべき危険なサイン」について解説します。


あごの黒いブツブツの正体は「猫ニキビ」。汚れではありません

まず安心していただきたいのは、あごの黒い粒は「汚れ」ではないということです。これは専門用語で「猫挫創(ねこざそう)」、通称「猫ニキビ」と呼ばれる皮膚の状態です。

猫ニキビの正体は、毛穴に詰まった皮脂や角質です。これを専門的には「コメド(面皰)」と呼びます。

猫ちゃんは全身を自分でグルーミング(毛づくろい)して清潔に保ちますが、あごの下だけは自分の舌が届かない死角です。そのため、どの猫ちゃんでも皮脂や食べカスが溜まりやすく、構造的にニキビができやすいのです。

ですから、「飼い主さんのケア不足」が原因ではありません。

なぜあごにできるの?

  • 舌が届かない場所だから:自分で舐めて綺麗にできないため、汚れが蓄積しやすい。
  • 皮脂腺が多いから:あごの下は皮脂の分泌が活発で、毛穴が詰まりやすい場所です。

【チェックリスト】様子見でOK?病院へ行くべき?判断の境界線

「このまま家で様子を見ていいの?」「それとも病院に行くべき?」
これが、飼い主さんが最も迷われるポイントだと思います。

結論から申し上げますと、「黒い粒があるだけ」なら自宅ケアでOKですが、「赤みや腫れ」がある場合は即受診が必要です。

ここで重要なのが、「コメド(黒い粒)」と「二次感染(赤み・腫れ)」の関係性です。
初期段階のコメド自体は、単なる毛穴の詰まりであり、病気というよりは体質的なものです。しかし、ここに細菌が入り込んで炎症を起こすと、「二次感染」という状態になり、治療が必要な皮膚炎へと進行してしまいます。

以下の基準で、愛猫ちゃんのあごの状態をチェックしてみてください。

✅ 自宅ケアで様子見OK(青信号)

  • 見た目:黒い砂のような粒があるだけ。皮膚の色は肌色〜薄いピンク。
  • 症状:痒がらない、痛がらない、気にしている様子がない。

この段階では、無理に病院へ行かずとも、後述する自宅ケアで改善が見込めます。

🚨 病院へ!受診が必要なサイン(赤信号)

もし以下の症状が一つでも見られたら、自宅ケアの限界を超えています。「赤み・腫れ・痒み」がある場合は、すでに二次感染を起こしているため、即受診が必要です。

  • 皮膚が赤くなっている、または腫れている
  • 出血している、または膿(うみ)が出ている
  • 猫ちゃんが痒がって後ろ足で掻いている、または痛がる
  • 毛が抜けてハゲてきている

これらは、獣医師による抗生物質や抗炎症剤の処方が必要なサインです。迷わず動物病院へご相談ください。


早く治したいなら「取らない」が正解!推奨される自宅ケア

「黒い粒だけだから、家でケアしよう」と判断された方へ。
ここで一番大切なことをお伝えします。

絶対に、黒い粒を無理に取ろうとしないでください。

多くの飼い主さんが、爪や目の細かいクシで黒い粒をこそぎ落とそうとされます。しかし、無理にコメドを取ろうとすると皮膚が傷つき、その傷口から細菌が入って、先ほどご説明した「二次感染(赤み・腫れ)」を自ら引き起こしてしまうのです。

「取ろうとしない」ことこそが、悪化を防ぐ最短の治療法です。では、具体的に何をすればいいのでしょうか?推奨される3つのステップをご紹介します。

ステップ1:食器を「プラスチック」から「陶器・ガラス」へ変える

実は、プラスチック製の食器は、猫ニキビの大きな原因の一つと言われています。

プラスチックは柔らかいため、目に見えない細かい傷がつきやすく、その傷の中で細菌が繁殖します。猫ちゃんがご飯を食べるたびに、あごがその細菌に触れてしまうのです。

まずは食器を、傷がつきにくく煮沸消毒もできる「陶器」や「ガラス」、「ステンレス」製のものに変えてみましょう(※金属アレルギーの子は陶器かガラスがおすすめ)。これだけで症状が改善する子もたくさんいます。

ステップ2:温湿布(ホットパック)で毛穴を開く

頑固な黒い粒を無理に擦るのではなく、「温湿布」でふやかしてあげましょう。

  1. タオルや厚手のコットンをぬるま湯(人肌程度)で濡らし、軽く絞ります。
  2. 猫ちゃんのあごに数秒〜数十秒、優しく当てます。
  3. 温めることで毛穴が開き、詰まった皮脂(コメド)が自然と浮き上がりやすくなります。

※猫ちゃんが嫌がる場合は無理にしないでくださいね。

ステップ3:優しく、あくまで優しく拭き取る

汚れが浮いてきたら、濡らしたコットンやガーゼで優しく拭き取ります。
ゴシゴシ擦る必要はありません。「表面の汚れをサッと拭う」くらいの感覚で十分です。

💡 ケアのポイント:60点を目指す
1回のケアで全部取ろうとせず、「今日はこれくらいでいいや」と60点を目指してください。
完璧に綺麗にしようとして「こすりすぎ」てしまい、かえって皮膚炎を悪化させるケースが後を絶ちません。猫ニキビは長期戦です。毎日の優しいケアの積み重ねが、一番の近道ですよ。

絶対にやめて!悪化させる3つのNG行動

ネット上には様々な情報が溢れていますが、中には猫ちゃんの皮膚にとって危険なものもあります。以下の3つは、獣医学的な観点からも避けるべき行動です。

1. 歯ブラシや爪でガリガリ取る

「歯ブラシで擦るとよく取れる」という情報を見かけることがありますが、これは大変危険です。
猫ちゃんのあごの皮膚はとてもデリケートです。ブラシの摩擦で皮膚のバリア機能が壊れ、そこからバイ菌が入って真っ赤に腫れ上がってしまいます。

2. 人間用の薬(オロナインやマキロンなど)を使う

人間用の薬や消毒液は、猫の皮膚には自己判断で使用しないでください。
人間と猫では皮膚のpH(酸性・アルカリ性)や厚さが異なります。人間には良くても、猫には刺激が強すぎてただれてしまったり、グルーミングで舐め取って中毒を起こす成分が含まれていることがあります。

3. アルコール消毒をする

「消毒すれば治る」と思われがちですが、アルコールは炎症を起こしている皮膚には激痛を伴います。猫ちゃんが痛がってケアをさせてくれなくなるだけでなく、皮膚を乾燥させて余計に皮脂の分泌を促してしまうこともあります。


よくある質問(FAQ)

Q. 他の猫や人間にうつりますか?

A. いいえ、うつりません。
猫ニキビは感染症ではなく、その子の体質や環境による皮膚のコンディションの問題ですので、他の猫ちゃんや飼い主さんにうつることはありません。多頭飼いの方も安心してください。

Q. 治るまでどれくらいかかりますか?

A. 焦らず、数週間〜数ヶ月単位で見守ってください。
一度できてしまったコメドが完全になくなるまでには時間がかかります。体質によっては、良くなったり悪くなったりを繰り返すこともあります。「完全にゼロにする」ことよりも、「赤く腫れさせない(悪化させない)」ことをゴールに、気長に付き合ってあげてください。


まとめ:愛猫のあごニキビ、焦らず「優しく」が合言葉

あごの黒いブツブツを見つけると不安になってしまうものですが、それは猫ちゃんとの生活の中でよくあることの一つです。

  • 黒い粒だけなら、無理に取らずに「食器変更」と「優しい拭き取り」で様子を見る。
  • 赤みや腫れが出たら、迷わず動物病院へ。

この2点を覚えておけば、もう迷うことはありません。
「綺麗にしてあげたい」というその愛情を、ぜひ「こすらない」という優しさに変えて、ケアしてあげてくださいね。


[参考文献]

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